血小板の活性化を測定する
血小板は実験上、扱いにくく、外部から刺激を受けると容易に活性化してしまうことから、体内での血小板の活性化状態の正確な計測は困難でした。例えば活性化の指標となる染色試薬を用いようとすると、その染色試薬そのものが刺激となり、意図しない活性化を引き起こすことがありました。私たちは血小板凝集塊を高速撮像しAIで画像解析する独自手法によりこの課題を克服することで、生体内の活性化状態の正確な計測を実現する技術を開発しています。
アテローム血栓症への応用
脳梗塞や心筋梗塞などのアテローム血栓症は日本人の死因の4分の1程度を占めており、がんに続いて2番目です。アテローム血栓症は、動脈硬化巣(プラーク)が破綻し、そこに血栓が形成され、血管が閉塞することで発症しますが、ここで血小板の活性化・凝集が大きく関与します。 アテローム血栓症のリスクを低減するためには抗血小板薬を処方することが考えられますが、抗血小板薬は脳出血などの出血リスクを増加させる副作用があるため、血栓症・出血の双方リスクを正確に検査しつつ治療を進めるのが理想的です。しかし従来はこのような血栓症リスクを定量評価できる診断技術は確立されていませんでした。私たちは血小板活性化の計測技術を活用して、アテローム血栓症のリスクを正確に検査して治療に役立てるための研究を継続しています。
新型コロナ感染症への応用
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では患者の重症化や死亡において血栓症が重要な要因の一つとみられています。私たちは東京大学との共同研究で、COVID-19患者から採取した血液を詳しく調べた結果、全患者の約 9 割において循環血小板凝集塊が 過剰に存在することを発見し、さらにCOVID-19患者の重症度や死亡率などと強い相関があることを発見しました。 私たちは血小板活性化の計測技術を活用して、COVID-19における重症化リスクの予測や、より良い治療法の研究などに役立てるよう、精力的に研究開発を進めています。