細胞を分取する
高速顕微鏡では、流路内を高速に流れる細胞を撮像します。得られた画像から細胞の形状や内部構造などを解析し、その種類や機 能、状態などの情報を得ることができます。リアルタイムAIではその複雑な画像を深層学習法などを用いて迅速に解析し、細胞が流路中を流れている間に分取判断を行います。セルソーターはその分取判断結果に応じて細胞を分離します。本技術は細胞の研究や産業利用に広く活用されると期待されます。
遺伝子スクリーニングへの
活用
細胞における特定の機能や、病気などに関連した遺伝子を見つけることは、細胞の理解や病気の治療法開発などに役立ちます。そのような遺伝子研究やスクリーニングに、画像活性セルソーターENMAを活用できます。私たちは会社設立の基礎となった研究成果で、微細藻類が二酸化炭素を濃縮する機構に関連する遺伝子を網羅的にスクリーニングする実験を行いました。この実験で は、遺伝子にランダムに変異を入れた20万個以上の細胞集団の中から、この機構が異常をきたした2000個ほどの細胞をインテリ ジェント画像活性セルソーターで分取しました。分取した細胞で変異が加えられた遺伝子を解析することで、この機能に関連する遺伝子のリストを得ることができます。同様の実験を細胞の様々な機能に対して行うことで、各種の細胞機能に関連する遺伝子の解明や、創薬ターゲットのスクリーニングなどに役立てられると期待されます。
がん精密診断への応用
顕微鏡でがん細胞を検出する細胞診断と、がん細胞の遺伝子変異を詳細に調べる遺伝子検査とを融合することで、従来よりも感度および特異度が高い診断が可能すると期待されます。例えば血中を流れるがん細胞(Circulating Tumor Cell: CTC)の検出は、がんの再発モニタリングなどを低侵襲かつ高感度で行う目的などで期待されます。CTCからがん関連遺伝子の変化を解析できれば、治療方針を早期に考えるうえで役立ちます。CTCは希少で数が少ないため、がん細胞における遺伝子変異を特異的に検査することが困難でした。ENMAを用いることでCTCを高速に検出、分離し、その遺伝子を詳細解析することが可能になると期待されます。私たちはその実証と実現を目指して研究開発に取り組んでいます。
有用細胞の探索
人類はこれまで、発酵食品の加工やバイオ生産など様々な用途で細胞の力を広く活用してきました。最近では細胞医療など、細胞そのものを治療に用いる技術も実用化されています。優れた性質や性能を持つ細胞を分離して活用することができれば、私たちの生活の改善に役立てることができます。例えば藻類由来のバイオ燃料において、よりオイル生産能力の高い細胞を単離することで生産性の向上に役立てることができます。人工的に加工した免疫細胞を用いてがん細胞を攻撃するがん免疫療法では、がん細胞に対する攻撃性の特異性が高い細胞が得られれば、より安全な治療の実施に活用できます。このように様々な場面で、よりよい細胞を分取するセルソーター技術が活躍すると考えられ、当社では技術開発を継続しています。